三年制のミッション系女学院。
一クラスに一人、クラス委員長(級長)が設けられクラスを取りまとめる。
また、生徒会に準ずるものとして“ニカイアの会”という生徒会組織があり、優秀な生徒が選ばれる。
ニカイアの会の生徒は学院で行われる年間行事を取りまとめるのが主な活動。
代表的なものは“聖母祭”だが、他にも“新入生オリエンテーション”“健康診断”“フィールドワーク(遠足)”“宗教講演会”“合唱会”“礼拝”などを教師と共に執り行う。
未来を担う女性の育成を目指し、実践的なコミュニケーション能力取得の為に作られた教育システム。
入学時に面接、筆記試験が行われ強制的にその者にもっとも適したアミティエ(疑似友人)をあてがわれるというもの。
これは全寮制という性格上、学院側から親しい者を作らせ生活に馴染ませるという理由と、卒業時に広くコミュニケーションが取れる人物を育てるという二つの理由からである。

ネリネの歌声は静かに、そして徐々に声量を増し、軽やかに劇場内へと響く。
伸びやかな声音に劇場内の観衆は、瞳を釘付けただ彼女を見詰めた。
(さぁ、私の番だ)
高く透き通る軽やかな歌声に負けぬように、だが互いの存在を打ち消さぬように伸びやかなアルトを響かせた。
(母が私へと聴かせ――)
私がネリーへと伝え教えた曲
かつて私はネリーを身体に音楽が流れていると評した。音楽が流れている者と、流れていない者がいると。
やはり私のネリーは――
ネリーの歌声を耳にした聴衆は、深い眠りにつき――目覚めた後、魂を少しだけ置いていってしまったような貌を見せた。
そして、私は――
(彼女が唄う度に心が幼い頃に引き戻されていく。引き波が足を攫い、深い海へと誘うように)